小中学生のころに、給食の時間が楽しみだったという人は多いのではないでしょうか。最近では、地元の食材を給食メニューに使うことで「地産地消」に取り組む学校があったり、給食費の無償化を始める自治体が増えたり、給食を取り巻く環境も変わりつつあります。
今回は給食のメリットや給食費の実態、無償化への動きなど、給食についてさまざまな角度から見ていきましょう。
給食の実施率と給食費の現状
給食は「学校給食法」という法律によって実施されています。義務教育の学校における給食と、給食を活用した食の指導について定めているこの法律は、給食が児童・生徒の心身の健全な発達を助け、食に対する正しい理解や適切な判断力などを養うことを目的としています。
文部科学省が2016年に行った調査によると、公立小中学校における学校給食費の平均月額(注1)は、小学校が4,323円、中学校が4,929円でした。前年の2015年は小学校が4,301円、中学校が4,921円だったので、全体的に微増しているのがわかります。
また、給食を実施している国公私立学校(注2)は、全体の95%にあたる29,959校。小学校では99.2%、中学校では88.9%の実施率となっています。
給食には多くのメリットがある
子どもたちにとって、給食は以下のようなメリットがあります。
- 栄養士が献立を作成しているため、栄養のバランスがいい
- さまざまな食材が使われているため、嫌いな食べものの克服につながる
- 塩分や糖分などの量が計算されており、生活習慣病のリスクを低減できる
- みんなと一緒に食べるため、会話や食事の楽しさを学べる
- 温かい食事をとれる
- お弁当には入れにくいメニューを食べることができる
- 家庭によって中身や栄養面に差が出るお弁当と違い、全員公平に同じものを食べられる
保護者にとっても、忙しい朝にお弁当を作る負担がないというメリットがあります。給食の提供には様々な努力も昨今の食材価格の上昇によって、学校給食にも影響が及んでいます。
限られた予算の中で必要な栄養量を満たすメニューを提供できるよう、1人あたりの肉や果物の分量を減らしたり、食材をアジからししゃもに変更したり、デザートの提供回数を減らしたり、といった努力を重ねて対応しているそうです。
食べ盛り・育ち盛りの子どもたちに提供される給食の量が減ってしまうのは残念ですが、給食費を抑えるためには仕方のないことかもしれません。また、なかには給食費の値上げに踏みきる自治体もあります。給食費を上げて保護者の負担を増やすのか、メニューのグレードを下げて子どもたちに我慢してもらうのか、悩ましい選択ですね。
給食無償化が子どもを助ける?
食材高騰の影響を受ける自治体がある一方、保護者の負担軽減や食育の推進といった目的で、給食の無償化を進める自治体も増えています。文部科学省によると、2016年度までに約60の自治体が無償化を実施しているそうです。
給食無償化の導入が広がっている背景には、子どもの貧困問題もあります。2015年には、埼玉県の公立中学校が、給食費を3カ月以上滞納した場合は給食を提供しないと保護者に通知したことが話題になりました。そして、その後インターネット上では、給食費を支払う能力があるのに払おうとしない保護者のモラルを非難する声が相次ぎました。
しかし、給食費未納問題の背景には、各家庭のさまざまな事情が考えられます。経済的な事情で本当に支払うことができない場合もあるので、表面的に判断するのは難しいです。
貧困問題に直面している子どもの中には、家庭で十分な食事を取ることができず、給食が拠りどころとなっているようなケースもあります。そのような状況で給食の提供が停止されてしまったら、子どもたちは必要な食事や栄養をとれなくなり、健康面や心身の成長、学校の成績にも大きな影響が出てくるでしょう。
経済的な理由によって生じる子どもたちの食生活の格差は大きいですが、給食はこの格差を縮小する役割を担っています。子どもたちの将来のためにも、みんなが公平に食べられる給食の無償化を進めようとする動きが広がりつつあるのですね.
私たちが小中学校で当たり前に食べていた給食ですが、子どものセーフティネットとして機能していることも含めて、さまざまなメリットがあります。すべての子どもが楽しい給食の時間を通じて、健やかに成長してくれるといいですね。
出典:(注1) 文部科学省|学校給食費調査
(注2) 文部科学省|学校給食実施状況調査